九章/竜の子

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誠心誠意を込めて、マナはカフ・アル・カディブの前で最敬礼を示した。目を合わせることも許されなかった殿上人が、自分の存在を認め、受け入れてくれたことへの感謝。 改めて国王陛下と向き合えば、ほがらかとは言えない不器用な笑い方は、息子のクラウンとよく似ている。 その息子のクラウンは、呆れたような、諦めたような、安心したような笑みを浮かべ、 「よくも長い間、騙してくれたな」と、いつもの憎まれ口を叩く。 「タイル絵ではなく、本物の竜に会えた感想はいかがですか?」 「……!」 「カッコイイ~とか。毛並みが美しい~とか。想像していた以上に神々しかった~とか」 「庶民的」 「え」 「庶民的な性格にがっか「プウッ!!」 「どわっ!?」 「!?」 「「マナ!!」」 口から吐いた空気砲は、クラウンを軽々と吹き飛ばした。 古の竜に関する文献の中には、風竜に関する記述も多く残されている。 雲よりも高い高度で暮らし、同じ竜族ですら風竜を捕らえることは出来ない。風はもちろん、成体ともなれば天候すら操り、風竜は季節とともにやってきて季節とともに去って行く──…… その性格は、天真爛漫……と言えば聞こえは良いが、要するに気分屋のいたずら好き。ひっくり返るクラウンを見て、キャッキャッと笑うマナにハズマとナツメは頭を抱えた。 交配以前に、こんな女に惚れた男は苦労するだろうと。 16才、竜族の中ではまだまだ子どもの部類では無いのかと。
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