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誠心誠意を込めて、マナはカフ・アル・カディブの前で最敬礼を示した。目を合わせることも許されなかった殿上人が、自分の存在を認め、受け入れてくれたことへの感謝。
改めて国王陛下と向き合えば、ほがらかとは言えない不器用な笑い方は、息子のクラウンとよく似ている。
その息子のクラウンは、呆れたような、諦めたような、安心したような笑みを浮かべ、
「よくも長い間、騙してくれたな」と、いつもの憎まれ口を叩く。
「タイル絵ではなく、本物の竜に会えた感想はいかがですか?」
「……!」
「カッコイイ~とか。毛並みが美しい~とか。想像していた以上に神々しかった~とか」
「庶民的」
「え」
「庶民的な性格にがっか「プウッ!!」
「どわっ!?」
「!?」
「「マナ!!」」
口から吐いた空気砲は、クラウンを軽々と吹き飛ばした。
古の竜に関する文献の中には、風竜に関する記述も多く残されている。
雲よりも高い高度で暮らし、同じ竜族ですら風竜を捕らえることは出来ない。風はもちろん、成体ともなれば天候すら操り、風竜は季節とともにやってきて季節とともに去って行く──……
その性格は、天真爛漫……と言えば聞こえは良いが、要するに気分屋のいたずら好き。ひっくり返るクラウンを見て、キャッキャッと笑うマナにハズマとナツメは頭を抱えた。
交配以前に、こんな女に惚れた男は苦労するだろうと。
16才、竜族の中ではまだまだ子どもの部類では無いのかと。
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