プロローグ

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「どこに行っても、自由に生きなさい。お前は誰にも縛られない風竜なのだから──……」 背後で裂けるような咆哮とともに、レイの体が傾いた。仔竜が憧れ続けた火竜の翼は片翼が焼け落ち、胴体には塞ぎようのない穴が貫通している。 ある者は目を背け、あの者は手で顔を覆い、カイジは次に備えてアルトの姿を探しに走った。 竜の死は災害を生む。火竜のレイは最期に炎と一体化して、その身を焼いた。その時に生じた爆風の勢いは凄まじく、地面をえぐり、木をなぎ倒し、何本も立ち上がった火柱が保護区全域を焼き尽くした。 そこにあったすべてのものを。風竜の雌が存在したという証拠を消し去るように──…… サザンクロスの襲撃で、北の監視区では新たに2体の竜を手に入れた。目当ての雌竜と、生き字引の老竜だ。 襲撃の際には仔竜2体が行方不明になっている。希少な風竜を逃したことは痛手だが、人の手を離れた風竜を再び捕らえる術はない。火竜に限っては北でも数が足りている。 「害を及ばすようであれば、見つけ次第、処分しても構わない」 それが、火竜アルトに下された国の判断だった。
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