九章/竜の子

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*** 北のノア王国侵攻に向かった2体の竜を見送った7日後、うち一体が重傷を負って戻ってきた。普段は仲が悪い弟の肩を借りて。非戦闘要員の有翼種・異母兄弟の背に乗って。 肩は外れ、上腕骨は折れ、風切筋も切断されていた。手術の末に骨は接骨されたが、完治するまでは動かせないように翼は固定されたものの、本人がそれを大人しく聞くような性格ではない。 手術が終わった直後に自らの足で歩き始めたゼロ・ワンは、その足で自身の寝床……竜の収容場へ向かった。 生活の場としては最低な暗渠だが、物心着く頃から棲み着いた環境は皮肉にも落ち着く場所でもある。仄暗い、空気の流れが一切無い、子どもの泣き声が絶えず聞こえる……そんな場所だ。 プライベートも何も無い鉄格子で隔たれた空間の中には、簡易な寝台があるばかり。手枷や足枷が装着された時期もあったが、成長した今はそれも無意味として外されている。 通路を歩く際には、わざと他所の鉄格子を叩いて歩いた。この数年で随分と仔竜の数は増えたが、どれも人間と掛け合わせた出来損ないばかりだ。たださえ狭い檻の隅に身を寄せ合い、コツコツ警告の骨音を鳴らして純血種に怯える姿は目障りで苛立つ。 「出迎えくらいしろよ、くそがッ!!」 キーンッ!! 「「「「「──ッ……」」」」」 「何度、言ったら分かるんだ! 無闇に子ども達を怯えさせるのはやめろ!!」 「チッ……いたのかよ」
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