一章/風の行方

3/26

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/503ページ
シヴァナとアラサンドラが捕らわれた際、カイジの身柄も北へ渡った。多くの研究者仲間が襲撃の際に殺されてしまったが、情報を聞き出す人間が北にとっても必要だったようだ。 まずは行方知らずの仔竜について。それから北には存在しない氷竜と土竜の扱いについて。特性は何か。人を殺したことはあるか。人間に従う意志はあるか。調教は可能か…… 頼むから2人を鎖で繋ぐような真似はしないでくれと懇願したが、手錠をはめられたのはカイジの方だった。 「愛国心があるのなら研究に協力をしろ。今後、竜を使って他国に対抗するのは国の方針だ。それもまた共存のかたちだと、割り切ることはできないか」 「竜が皆、好戦的だと思うな! シヴァナもアラサンドラも決して人を襲うような竜じゃない! 戦場に立つなんてありえない話だ!」 「もちろん、雌は戦場に立つ必要は無い。まずは繁殖のために雄との相性を見させてもらう」 「彼女は恋人を失ったばかりなんだぞ!? 傷を広げるような真似がどうして出来る!?」 「雌なら強い雄に惹かれる、それが動物社会の摂理だろう? ゼロ、ベツヘレム、レオニズ、ゼロ・ワン、ゼロ・ツー……ノーザンクロスにいる竜は、どれも死んだ火竜に劣らない生命力あふれる竜だ」 「……そうじゃないッ……シヴァナにとって、レイに代わる男はいない!!」 「心変わりも時間の問題だ。そこまで雌の氷竜が大事なら、君が交配のパートナーを決めてくれたってかまわない。その気になったら、いつでも声をかけてくれ」 「……ッ……」 「今日から君も竜研究所の“仲間”、なのだからね。施設内は自由に見てもらってかまわない。手錠はそうだな……明日の朝には外してやろう」
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加