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それから差し出した包みは西の領主から国王にあてられたものだ。中身は西の伝統技術で織られた反物。国王の好みを反映し、黒の生地に細かな銀の刺繍が施されている。刺繍が立体的に浮き出て見え、光の角度ではその輝きは宝石にも勝る。
これまでも職人の技術を惜しみなく生かした献上品を預かったが、国王の脇に控える父親とよく似た顔の王子が表情を変えた姿を見たことが無い。
『私はここにいる必要がありますか』
『似たようなものをお持ちではないですか』
『なんてつまらない時間なのだろう』
幼い心の中が透けて見えるようだ。
(どれほど価値のあるものでも、子どもにとっては何の面白みもないものに違いない)
せめて子どもが喜びそうなものを個人的に見繕ってくれば良かったか。今更配慮しても無駄なことを考えながら、包みを開く手を……止めた。
白い絹の包みが茶色に汚れている。これは血だ。間違いなく、血の汚れだ。我が目を疑い、国王が向ける目を窺い、1度開きかけた包みを結び直した。
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