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「……どうした?」
「もも申し訳ございません、私物を間違えて持ってきてしましましまったようです」
「間違えた?」
包みに手を置く手が震える。それは包みの中身が震えているからだ。何が入っているのか確認は避けたが、それは生きている。生身のものだ。献上品の中身は生身のものが血を流して包まれている。どんな状況だ、それは。
領主が誤って、狩りで仕留めた獲物でも包んだか。誰かが自分を陥れようと、動物の死体を王の前に晒して罪に問うことを目論んだか……
屋内は外より涼しいにも関わらず、額から汗が流れ落ちてきた。差し出した荷物を背中に隠し、「失礼しました」とやり過ごしてはみたものの、国王も王子も左右に控える高官も皆、不自然に思っていることは表情を見れば明らかだ。
「ハズマ、何を隠した?」
「いえ? 何も……」
「そなたが動揺した顔など初めて見たぞ。何もないわけがない」
若い王は意地の悪い笑みを浮かべて身を乗り出す。普段は献上品に無関心の王子ですら、今は訝しげに興味を持っている。
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