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「……お目汚しになるかもしれません」
「かまわん」
「……私自身、どうしてこのようなことになったのか」
「弁解はいい、包みを開けよ」
これ以上ごまかすことは出来ず、膝の前に包みを差し出した。
1度解いた包みは緩み、触れなくても中身が開く。中から出てきたのは腕だ。生身の人間の腕だ。それも幼子の腕。すぐに頭が持ち上がり、頭から血を流した女児が顔を出す。
不健康な白い肌に酸化した血がべったりと張り付き、今にでも泣きそうな表情で白い包みに再び身を隠した。
王への贈答品は台無しだ。おそらく血も付いているし、素足で足蹴にしたそれは到底、国王に納められるものではない。
「こら、隠れるな! お前は誰だ、何故、ここにいる!?」
「はなしてー!」
「放してじゃない! 陛下の御前であるぞ、礼を尽くせ!」
「さわなないで! マナにさわなないで!」
「泣くな、説明をしろ!」
「くわれるー! ふぇーん、くわれるよー!」
「食うか、阿呆!!」
布ごと包んで抱き上げれば、涙も鼻水もよだれも、垂れ流されて献上品の反物に染みる。西の領主に知られれば女児は無事では済まされぬ罰を受けるところだが、小さな体が見せる抵抗、子どもの駄々というものは大人が思う以上に厄介だ。
呆気にとられる王族の顔も、粗相に青ざめる高官の顔も新鮮だが、それ以上に自分が青ざめていることは間違いない。
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