一章/風の行方

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酒の肴を手に入れて合流した友は、餌付けするかのように炒り豆を女児に与えた。よほどお腹が空いていたのか口いっぱいに溜め込んで、左右の口腔内は膨らんでいる。 「齧歯類みてぇだな……」 友と自分が抱いた印象の違いに苦笑したが、問題の解決には至っていない。 引き取るにしても、騎虎隊は男所帯の全寮制。朝から日が暮れるまで訓練と騎虎の世話に追われ、手が空く唯一の時間は夕暮れ後だ。 「大体、所帯も持っていない男が子どもを引き取ろうとするな。女が寄りつかなくなるぞ」 「分かってる、引き取るつもりなどない。他方の孤児院に預けるか、町ならば商家の下働きとして雇ってもらうか……」 「それは賭け、だな。使用人を大事にするかどうかは主人の器次第だ。場合によっては劣悪な環境で奴隷同然に扱われる」 見るからに使えなそうな子どもだ。体も華奢だが、歩行もおぼつかない。眉を八の字に下げて、ハズマの足を掴んで放さない。 厄介な存在に違いは無いが、頼りにされれば多少なりとも愛着は沸く。 「心配なら王城勤めの下女にでも推薦してみたらどうだ? 覚える仕事は多いが、給金も支払われるし、教養も身につく」 「こんな幼子だぞ? 下男下女の仕官条件は7才からのはずだ」 「そこは騎虎隊2人の顔を立ててもらおう。ワケを話せば、多少なりとも融通を利かせてくれるはずだ」
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