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混雑する仕官試験場の受付から書類を2枚受け取ると、身元保証書にはハズマが。推薦状にはナツメがそれぞれ署名した。その際に押された押印は、騎虎隊を示す角判だ。
「いいか、マナ。この2枚の書類はお前に対する俺達の善意でもある。これがあれば、王城の“どこかに”配属されることは間違いない。少しでも恩に感じたら、任された場所で精一杯働け」
「おん……」
「ここは国家の中心だ。色んな人間が働き、色んな情報が集まる。働きながら社会を学び、自分の居場所を確立しろ。いいな?」
「……~~~っ……」
「歯を食いしばりながら、強くなれ」
厳しい言葉をかけたのはナツメだった。最後まで気遣い、自分用の軟膏を手渡したのはハズマだった。
面接に臨む長蛇の列に並ぶ小さな影はすぐに見えなくなってしまったが、それでもしばらくの間は列の動きを見送った。
不安げな顔をして何度も振り返っていた。何か言いたげではあったが、言葉を呑み込んで口を一文字に結んだ。その時には覚悟を決めたように強い眼差しを前を向け、4歳児とは思えない並々ならぬ覚悟が窺えた。
「あと20年もすれば、小股の切れ上がったいい女に成長しそうだな、ありゃ」
「その時は俺達、43か……」
「「おっさんだな」」
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