プロローグ

4/20

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/503ページ
「それを読んでもらえれば分かるけど、現在、サザンクロスでは5体の竜を保護している。雄が3体、雌が2体。アラサンドラ以外の竜は有翼種で、その内の1体は飛行練習中でまだ飛べない」 「えっと……アルト?」 「そう、アルト。まだ幼い雄の火竜。保護区には同じ火竜のレイがいる。アラサンドラが最年長で間違いないが、彼は老竜だからね。リーダーの気質じゃない。レイが実質、サザンクロスのリーダーだ。まずはレイに君を紹介しよう」 上司の背中を追いながら個体の情報を目で追う。発見第1号のアラサンドラが1ページ目。それから、レイ、シヴァナ、アルト、マナと名前が続く。書類には情報とともに個体の竜の姿が絵で描かれているが、5ページ目の姿にカイジは首を傾げた。 土竜、火竜、氷竜、火竜の後に続く姿は、雲、のような。綿、のような…… (……毛玉?) 「あの、このマナって「君も今日から研究者として保護区の中で生活してもらうわけだけど、1日の仕事は竜の調査に限らない。我々が暮らしていくためには畑も耕すし、家畜の世話もする。土地の整備、木の伐採、水路の修繕工事に湖の水面に浮かんだ葉っぱ集め……想像以上の肉体労働だ、覚悟しておきなさい」 「あ、はい。え、でも、そんな荒れた土地には見えませんが……」 「今日はまだ癇癪が起きていないからな」 「癇癪?」 「女の癇癪は、嵐よりも怖い」 指を差された空を見あげれば快晴の空。雨の心配は微塵もなかった。 保護区は山を拓いた土地のため自然の中に施設があり、畑がある。畑には種類豊富な作物が実り、収穫しているのは同じ白衣を着た研究者たちだ。 白衣に麦わら帽子というミスマッチな出で立ちではあるが、彼等は皆、竜族との共存を目指す穏健派。カイジの存在に気付いた者は、「ようこそ、保護区へ!」と、温かい声をかけて迎え入れてくれた。
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加