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手持ち無沙汰で再び天井を見上げる。レイの色は、シヴァナの色は、アラサンドラの色もあるだろうか。似たような色は見つけたものの、まったく同じ色はここにはない。
代わりに白い、染色前の白い布を見つけて、カイジの白衣を思い出した。最後に見た怖い顔。気を失うほど痛いこと。踏みつけられた時の胸の圧迫。どうしてどうしてどうして……理解できないことが苦しく、また涙が滲む。
「なんだ、【四季彩署】に引き取られたのか」
「……」
「お前は色が白いから何色でも似合う。良かったじゃないか、適材適所だ」
「王子様、またいらっしゃったんですか」
「構うな、勝手にさせてもらう」
我が物顔で小屋に入ってきた少年は、オイリとは別の作業台を陣取った。室内にある筆や顔料を寄せ集めると、早速、持参した白紙に朱筆を走らせる。時折、天井を眺めては手を止め、思い立ったように再開する。
マナにとって少年は、先ほども会った“知人”だ。そして、同年代の“子ども”だ。背丈はアルトと変わらないが、言葉遣いは聞き慣れない。それでも話す言葉は通じる相手だった。
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