一章/風の行方

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「なにそれ」 「……」 「へんな絵」 「な……人の絵を勝手に覗き込むな!」 誰に向かって無礼な口を利いている、そう一喝しようかとも思ったが、相手は自分より幼い子どもだ。 身形を見れば生まれや育ちもたかが知れている。一般庶民、いや、貧乏人の子どもにしてみれば、王族に対する礼節など、実際に示す機会がなくて当然だ。教養がなければ、砕けた態度もある程度は仕方あるまい。 「……どうせ言っても分からんと思うが、これは竜という生き物だ」 「……りゅう」 「あぁ、他国に存在する伝説の生き物だ。その中でもこれは火竜。口から火を吐き、大きな鉤爪で獲物を切り裂く最強の竜だ」 「……えー……」 「えー、じゃない。なんだその不満な顔は」 「これ、トカゲ」 「トカゲじゃない」 「ハァー、て言ってるトカゲ」 「ため息はついてない、火を吐いてるんだ!」 それに納得しないマナは首を横に振りながら、念を押してもう1度言う。 「ト・カ・ゲ」 「……お前、なかなか自己主張が強い奴だな」
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