12人が本棚に入れています
本棚に追加
/503ページ
「なにそれ」
「……」
「へんな絵」
「な……人の絵を勝手に覗き込むな!」
誰に向かって無礼な口を利いている、そう一喝しようかとも思ったが、相手は自分より幼い子どもだ。
身形を見れば生まれや育ちもたかが知れている。一般庶民、いや、貧乏人の子どもにしてみれば、王族に対する礼節など、実際に示す機会がなくて当然だ。教養がなければ、砕けた態度もある程度は仕方あるまい。
「……どうせ言っても分からんと思うが、これは竜という生き物だ」
「……りゅう」
「あぁ、他国に存在する伝説の生き物だ。その中でもこれは火竜。口から火を吐き、大きな鉤爪で獲物を切り裂く最強の竜だ」
「……えー……」
「えー、じゃない。なんだその不満な顔は」
「これ、トカゲ」
「トカゲじゃない」
「ハァー、て言ってるトカゲ」
「ため息はついてない、火を吐いてるんだ!」
それに納得しないマナは首を横に振りながら、念を押してもう1度言う。
「ト・カ・ゲ」
「……お前、なかなか自己主張が強い奴だな」
最初のコメントを投稿しよう!