一章/風の行方

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竜がどういうものか教えてやる、少年はマナの手を取り、「コイツ、借りる」と言って【四季彩署】から連れ出した。 おぼつかない足取りのマナは何度も転びそうになったが、地面に膝を付く間もなく引き上げられる。 「付いてこい、無礼者」 すれ違う者は少年に向かって頭を垂らすが、一々それに応えることはない。通路の中心を走り、最後は完全に立ち止まったマナの背中を押して目的地に到着した。王城に隣接するのは王立博物館だ。 貴重な資料を取り扱っているため、一般人の立ち入りは許可されていない。資料の閲覧が許されているのは、王族の他には一部の高官と歴史研究者のみだ。 部外者であるマナの立ち入りを当然、管理人は禁じたが、王子が「1枚だけ見せたい絵がある」と説得すれば、それが何なのか見当がついた様子で「今回だけですよ」と、特別に立ち入りが許可された。 博物館自体、歴史が古く、高い天井を放射状に支える梁が印象的だ。その天井近くにそびえる本棚も、可動式の梯子がなければ最上段には手が届かない。表紙を見ても大人でも読めない文献が多く、それらを読み解くための研究機関も結成されている。
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