二章/フェアリーリング

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採取してきた野草を川の水で洗い、土や砂などの汚れを落とす。植物は葉を使う場合もあれば、花や根、種を取り出した実を使用することもある。 使用する葉は煮た時に色が出やすいように切断し、火は沸騰しないように注意する。十分に色が出たところで白布を染液に染みこませ、必要日数放置。最後は余分な染料を洗い落とし、天日で乾燥させれば完成となる。 しかし、原料も採ってきてすぐに使えるものもあれば、完全に水分が抜けるまで乾燥させたり、発酵させる必要があるものなど、作業工程はさまざまだ。 原料を得るために職人は高山植物を探し求めて山奥に入ることもあれば、実を結ぶ木に登ることも多々ある。自生が難しいものは種から育て、固い殻を砕いて中の種子を取り出す作業も地味に力仕事だ。 殻を棍棒で叩いて亀裂を入れる。爪で殻をこじ開けて、中の種子を取り出す。1つの殻から得られる量は、ゴマ8粒程度。ザルいっぱいになったらそれを1度煎ってから煮出して使用する……が、目の前のザルはまだ底が見えている。 「……相変わらず地味な仕事をしてるのね」 「話しながら手伝ってくれても良いんですよ」 冗談じゃないとでも言うように、赤毛のケリーは両手を膝の下に隠した。
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