二章/フェアリーリング

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【四季彩署】に配属されてから5度目の秋を迎えたマナは9才になった。今では色の名前もたくさん覚え、視界に入るすべての色が“何色”か、無意識に考えてしまうほど、今の職場に染まっている。 年上の同期、ケリーが身につけている下女の作業服も鳥の子色の制服に、前掛けは柑子色。彼女の赤毛ととてもよく似合っている。 しかし、当の本人は仏頂面。彼女が職場の王城を離れて染色工房に来る時は、お仕えしている女官の愚痴を吐きに来るためだと、四季彩署の人間は皆、理解していた。 一方的に愚痴を聞かされるマナを最初は不憫に思っていたが、仕事に慣れた手は止まることなく、上手く相づちを打ちながら作業を続けている。 「女官様ってばひどいのよ、私が町で手に入れた新作の紅を没収したの。それだけじゃないわ、没収したものを勝手に使用して、周りの人に見せびらかしているのよ。『出たばかりの新作なのよ』って、そもそも私のものなのに!」 「へぇ、そんなに綺麗な紅色なの?」 「そこは問題じゃないのよ、私のものを勝手に使われたことが問題なのよ」 「あぁ、そっか」 「私くらいの年になれば紅もおしろいも皆がしてる。なのに女官様より綺麗になることが許されないなんて、そんな話がある? ただでさえ装飾品も許されていないのにひどい話だわ」 「ケリーさんは十分綺麗だから今のままでいいじゃない」 「違うのよ、マナ。着飾りたいの。私だって宝飾品を身につけて、今より煌びやかに変身したいの」 「そっかそっか」
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