二章/フェアリーリング

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価値観の違う少女2人の会話は、聞いている方も微笑ましい内容ばかりだ。次第に話は脱線し、王城で流れる恋の噂や女官の間で流行りの髪型、才色兼備な文官の話など、これまで四季彩署まで届かなかったうわさ話がケリーを通して聞かれるようになった。 そして、下女とはいえ2人ともその場に花が咲いたような見栄えだ。マナはまだまだ子どもらしい顔立ちだが、ケリーは娘盛りの16才。余計な装飾を施さなくても、町に出れば十分男の目を惹くだろう。 ケリーが未だに高官のお目にかなわないのは、王城勤めの男達はそもそも容姿で選ばれた女官、下女に囲まれて日常を過ごしているため、美女に対する目が肥えている。一方、男所帯の工房で働く男達にしてみれば、マナを訪ねてやってくるケリーは十分に目の保養になる華だ。『そのままでいい』と言うマナに、内心同調する男は多い。 「また邪魔しにきたのか、お嬢さんは。マナを使いに出す、お前さんも仕事場に帰るがいい」 「わ、お帰りですか、先生!」 工房の主の帰還にケリーは慌ただしく帰り支度を始めたが、作業の手を1度止めて、マナも小屋の中へ飛び込んだ。
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