二章/フェアリーリング

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「待って待って、取り上げられた紅の変わりにはならないけど」 持ち出した小さな器の中には赤い顔料。それを手の甲で練ってから、中指でケリーの唇にトントンと色を置く。 決して主張しない自然な赤。16才のケリーに似合う健康色だ。 「甚三紅、悪くない」 主の評価を得られ、ケリーの表情がこの日1番華やいだ。 「ありがとう、マナ! また遊びに来るわね!」 「うん、待ってる!」 「来んでいい、待たんでいい……まったく」 キヌヅカが屋外の作業場に視線を巡らせば、職人達の手元が速度を上げる。少女達の会話を盗み聞き、手元が作業がおろそかになっていたのは明らかだ。 その原因の1人は指示される前からキヌヅカが用意したカゴを背負い、今まで作業していたスペースをさっと片付けた。 「何が必要ですか?」 「シロツメの葉を摘んできてくれ。王女様のおくるみを明日、染色する」 「シロツメですね、なら牧場からもらってきます」 「頼むよ」
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