二章/フェアリーリング

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歩行すらおぼつかず、幼い子どもがカゴを引きずりながら移動していた時期はあっという間に過ぎた。 王城近辺の草木採集はマナに任せることが出来るようになり、キヌヅカは新たな色作りに没頭するようになった。マナ自身、仕事を任されることが嬉しく、泥にまみれることも、草で手を切ることも苦痛に感じたことはない。 シロツメの葉は猪目型の葉を4枚つけ、煮出せば黄色がかった淡い緑色になる。原料自体は雑草なので、場所を選ばず国の全土で群生しているが、本当に綺麗な色を出すのは全体の3割。日向に自生し、尚且つ、直射日光を浴びていないもの。 見つけては根元から丁寧に折っていく。すぐに指先は緑色に染まった。まるでアルトの手だ。 「おい」 「!?」 「模写の邪魔だ、退け」 「……うわ」 「……一国の王子の顔を見て『うわ』とはなんだ。相変わらず無礼な奴だな」 牧場の風景を描くクラウンの隣には、若い騎虎が控えている。黒とグレーのトラ模様。マナの接近に尻尾を振って応えるが、主の許可無く自ら近付く真似はしない。
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