二章/フェアリーリング

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マナ自身は構わず王子の手元を覗けば、描かれていたのは目の前の原風景。ただひたすらに青草が繁る。 「絵なんて描いて……王子様が暇をもてあますくらいですから、今日もこの国は平和なんですね」 「バカ言え、このところずっと執務室にこもっておったわ。5日ぶりに王城を抜けてきてみれば、まさかお前に出くわすとは……まったく、息抜きが台無しだ」 「明暗をもっとはっきり描き分けた方がぼやけた印象になりませんよ」 「うるさい、ほっとけ!」 王子は今年14になる。 10才の頃から四季彩署に出入りすることはなくなったが、今でも時間を見つけては絵を描いている姿をこれまでにも何度か見かけていた。年々画力は上がり、描く対象物も幅広い。時には騎虎、時には人物、時には風景画……そして、竜。 今、彼が描く竜はどう見てもトカゲではなくなった。そしてどこか恐ろしくなった。 「だが、お前も運がいい。見えるか、あれを」 「なんですか?」 「フェアリーリングと呼ばれるものだ。こっちに来てみろ」
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