二章/フェアリーリング

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言われた位置から視線を低くして見れば、牧草地の草がある場所だけ円状に渦巻き、キラキラと鱗粉のようなものが輝いている。 しかし、見えたのはそれだけではない。目をこらして見れば、そこに何かが動いている。虫ではない。小さな小さな……翅のある小人。 「フェアリーリングとは、妖精が歌って踊った痕跡だと言われている。目撃情報は以前から聞こえてきてたんだが、実際に目にするのは俺も今日が初めてだ」 「妖精……あれ、妖精ですか?」 「妖精が踊った“痕跡”だ」 「痕跡……」 いや、現在進行形で歌って踊っている。3人……“人”という数え方で合っているのかも疑わしいが、いることは間違いない。1人は歌い、1人は踊り、1人はシロツメの葉をくるくると回しながら飛び跳ねている。 「……ちょっと、それ預かってて下さい」 「は? おい、なんだ」 背中のカゴを1度下ろし、地面に這うようにして接近する。動く対象物は次にどう動くか予想を立てて、先回りして捕まえる…… シロツメ草が下から上へ上昇した瞬間を見計らって、マナは跳ねた。 「捕まえたー!!」 「……」 「……と、思ったのにアレ……いない。おかしいな」 「おかしいのはお前の頭だ! 妙な動きをして驚かせるな!」 手の中はおろか、フェアリーリングからも妖精たちは消えていた。キラキラ輝いていた鱗粉も今は見えない。 抗議の声をあげるクラウンに対し、若い騎虎はマナを労うように一声上げる。まるで「惜しかった」とでも言うように。
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