二章/フェアリーリング

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就寝時、呼び起こされたのはその夜だ。 工房の一室で寝泊まりしているマナを名前で呼ぶ声がする。しかし、それは耳から入る声では無く、脳に直接、語りかけてくる声であり、マナは夢の中と錯覚しながら目を覚ました。 「……まだ目覚める時間ではありませんが」 (昼間ではお互いに支障があるでしょう。今だけ少し、お時間をください) 「……ん~……まぶたが落ちるまでなら」 寝ぼけた頭で返事を返せば、目の前にはキラキラ輝く金の鱗粉が現れた。思わず指で触れれば、粉は弾かれ消えてしまう。 (やはり貴女には見えるのね) 「あれ、昼間の……」 (えぇ、昼間は突然のことに驚いたわ。まさか私達を捕まえようとする人がいるなんて、何十年もいなかったもの) 目の前に現れたのは、シロツメの葉で踊っていた妖精たちだ。抗議の目を向ける者、その背中に隠れる者、1人はマナの周囲を飛び回り、髪の毛を引っ張ったり、まぶたを持ち上げたり、興味津々といった様子だ。 自由に飛び回る“はね”は、鳥類の翼とは違う。竜族のそれとも違う。どちらかと言えば、昆虫の翅だ。
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