二章/フェアリーリング

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ベッドの上で膝を抱える仔竜をなだめるように妖精は周りを飛び回った。闇に振りまく鱗粉は、まるで満点の星空だ。触れては砕け、更に細かく弾け散る…… 「……今度、私にも歌を教えてくれる?」 (((え?))) 「……私も歌は大好きだけど、あまり曲を知らないから」 四季彩署に来てからはもちろん、サザンクロスの生活の中でもカイジは歌を歌って教えてくれることは無かった。教えてくれるのは星の名前や植物の名前ばかり。歌はといえば、シヴァナが歌ってくれた子守歌ぐらいしか知らない。しかしその歌は、マナにとっては歌うものではなく、聴くものだ。 (喜んで) (歌もダンスも) (私たち、とーっても得意なのよ) 「ありがとう」 3人のピクシーは、また会いに来ることを約束して窓から飛び立っていった。見送ってからそれぞれの名前を聞き忘れたことに気付いたが、1人は残り香からその名を推測する。 ハルジオン。花言葉は追想の愛。 生き別れた兄弟の顔を思い浮かべ、彼が今夜、屋根のあるどこかで安心して眠れていることを願った。
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