二章/フェアリーリング

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*** 職人が使用するかまどと並ぶ小さなかまどは、2年前にキヌヅカがマナ専用に新しく作ったものだ。乗せられる釜も家庭用の炊事で使用する一般的なサイズのものしか乗せられないが、遊び半分で染色を真似るマナには十分すぎるものだった。 染めるための原料も近隣で採れるありふれたものばかりだ。草木はもちろん、土や泥でも試した。白い布には間違いなく色がついたが、それは染色では無くただの汚れでしかない。眉を下げながら桶の水で汚れを落とすマナに対し、「懲りずに色々と試してみろ」と、キヌヅカは少女の頭をわし掴んだ。その後もマナは試行錯誤を続けている。 「子どもというものは少し見ない間に本当によく成長する」 「しっかり働いているようだな、マナ」 「おや、これは珍しい」 「わぁ、お久しぶりです!」 マナを訪ねて工房に姿を現したのは、騎虎隊の2人、ハズマとナツメだ。 5年前にマナの仕官試験を見送った後、彼女が王城仕えではなく、王城から離れた四季彩署の工房で働いていることを突き止め、その後もたびたび工房を訪れては、自分が身元保証人となった少女の様子を見に来ていた。 あの年の仕官試験場でもっとも幼かった少女も今年で9才。本来であれば親元を離れる年齢にようやく達したところだが、早くに下女として働き始めたマナは今ではすっかり工房の日常に馴染んでいる。
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