二章/フェアリーリング

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騎虎隊の身分は高官に並ぶ。マナはキヌヅカの背後に控え、許可が下りるまで軽く頭を下げた。 2人が初めて様子を見に来た日、不格好な前掛け姿で必死に自分より背丈のあるカゴを引きずっていた娘は、当時と変わらず萌黄色の前掛けを愛用している。色白の少女にとてもよく映える色だ。 「西からの帰りだ。土産を買ってきたから皆で食べてくれ」 「いつもお心遣いありがとうございます。休憩の時間に早速、ご馳走になりましょう」 「マナ、今日はお前に仕事を持ってきてやったぞ」 「仕事?」 「ハズマからもらった息子のおくるみだ。お前に染色を頼みたい」 「え。あ! 無事に産まれたんですか!」 「先月末にな。母子共に健康だ」 ナツメは1年前に6才下の妻を娶った。相手は騎虎を世話する厩舎責任者の娘。詳しい話は聞かないが、この5年の間にハズマもナツメも部下を持つ立場に昇格したという。 渡されたおくるみは、二重織の綿だ。吸水性が良く、肌に優しい。子どもが産まれた際に贈られる一般的なものだが、今はまだ何色にも染められていない無地の白。
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