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「私が染めても良いんですか?」
「いつも古布の端布でいたずらしていると聞く。たまには大きいものを染めてみたいだろう。色は任せる、お前の好きなように染め上げてみろ」
「やった!」
「これ、言葉遣い!」
失礼しましたと口にしながら、その表情に反省はない。既に何色に染めようか考えることが楽しくて仕方が無いという表情だ。
「やれ、まだ子どもだな」
「はい、まだまだ子どもです。ところでハズマ様の方はいい人はおられないんですか? ナツメ様が所帯を持ち、飲み仲間が減ってしまったご様子ですが」
「う、うむ……なかなか縁というものがなくてな……」
「縁ならあるじゃないか。どうだ、マナ。10年後、ハズマのもとに嫁ぐというのは。好きなものを好きなだけ買ってもらえるぞ」
「それも悪くないです。その時はハズマに綿や麻、絹の布をたくさん買ってます」
「ハハ、布目的の結婚か! 新居では青臭い結婚生活を過ごせそうではないか!」
「……草ではなく、肉を煮込める嫁が俺は欲しいよ」
ひとしきに笑った後、ハズマとナツメを見送った。
土産にもらった豆の蜜漬けは、ノア王国西部の郷土菓子。それに合うのは濃いめのお茶だ。マナは工房の中で鍋に湯を沸かし始めた。
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