二章/フェアリーリング

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マナ自身、国立博物館の中に入ったのは、クラウンに壁のタイル絵を見せてもらった1度きりだ。 当時の記憶は既に不鮮明ではあるが、数え切れない数の書物が貯蔵されていた。当時は背表紙の文字すら理解出来なかったが、今でも年代物の歴史書物を理解できるとは思えない。そもそも空気の流れが悪い屋内で過ごす生活は、マナにとっては耐えられそうになかった。 「でも、博物館司書に選ばれるということは実際に優秀なんだろうね。融通が利かないということは、規則を徹底し不正は絶対に許さないということだから。あそこには国内外の貴重な資料が集まるから、信頼できる人間で無ければ任されないよ」 「外国の資料もあるんですか」 「ノアは過去に隣国と色々あった国だから、異国の言葉で記された異国の資料もたくさん残されているはずだよ。ほら、王子様は昔から竜が好きだったじゃないか。そのあたりの知識は、みんな博物館で得られたものじゃないかな」 「……博物館で……王子様が……竜の情報を?」 「お菓子、美味しいね。また今度遠征に行った時に買ってきてもらおうか」 「なるほど……その手があった!」 「あれ、え、マナ?」 仲間の行方は知らずとも、竜を知る術がこの国にもある。どんなささいな情報でも、後に活かすことが出来れば……力として得られるものがあれば…… 王立博物館。背表紙も読めない分厚い資料に、挑む気力が沸き上がった。
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