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四季彩署に戻ってからは、罰として日常業務以外の雑務が命じられた。
木の実を石臼で挽く作業。ツルのトゲを折る作業。かまどにくべる薪を割り、青草を熱湯で揉み洗う。爪は割れ、指は皮膚が裂けて傷だらけ。熱傷により赤く腫れ上がった手は、何に触れても痺れて痛い。
王立博物館を穢すことは決して許されないことを身をもって知った一方では、自分をこんな目に合わせたカンコスイを恨んだ。激しく腹が立った。日常業務の殻割りも、カンコスイに見立てて叩き割った。
「……アンタってばいい子ちゃんじゃなかったの?」
「……」
「眉間にシワなんて寄せちゃって……女の子がそんな顔をしたらダメよ、どんなに悔しい時でもふてぶてしく笑ってやらなきゃ」
話を聞いて顔を出しに来たケリーの手には、以前、マナが見繕った赤い顔料が握られている。今度は自分で唇に色を置き、鏡代わりに「どう?」と出来栄えを尋ねる。もちろん、今日も文句なく美しい。
「普通に考えてアンタみたいな下女が立ち入れる場所じゃないに決まってるでしょう。その男……えーと、なんだっけ。カンなんとかが言う通り、博物館の資料を閲覧できる人間は、それを活かせる人間でなければならないんだもの」
「だから、私は……」
「アンタは、草を集める、ただの下女。他の何者でもないわ」
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