三章/他国の竜

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「風竜」と、言葉に出かけることもない。 辛辣な言葉を黙って聞き入れ、他人に迷惑をかけずに資料を読む手段を改めて考える必要があった。 頭の中では既に1つの手段が思い浮かんでいる。 発言力は絶大な地位に立つクラウン。本人さえ承諾してくれれば、以前のように博物館へ入る許可をもらえるのではないか…… しかし、城外で働く者は王城に立ち入ることも許されず、当の本人は屋外で見つけても大抵は従者を引き連れている。迂闊に呼びかければ、厳しい折檻は免れない。今度は泣いて謝っても許してはもらえないだろう。 四季彩署にも顔を見せなくなり、年々身長差は開くばかりだ。彼の“子ども時代”は残りわずか──……軽口を言い合える相手ではないことは分かっていたが、改めて自分の中で戒める。 自分は下女で彼は王族。 この国で1番、頼ってはいけない存在だ──…… 「……町にも、竜に関する本って売っているのかな……」 四季彩署で働き始めて5年。使わずに溜め込んでいた給与で何が手に入るのか。 全財産を手に町へ下り、マナは自分が出来る可能な範囲で竜に関する情報を集めてみることにした。 竜が存在しないこの国でも、あのタイル絵のように竜の足跡をたどることは出来るはずだ。たとえ、遠回りになったとしても……
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