三章/他国の竜

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昼間は四季彩署で業務をこなし、夜は睡魔に負けるまで、異国の書物を読みふける日々を過ごした。 当初は竜族に関する書物を買えるだけ購入しようと書店を訪れたが、店で揃えているのは新しい流行りの本ばかり。竜が載っている本はといえば、子ども向けの絵本が1冊見つかっただけだった。 そこで書店の店主に古書堂を紹介された。本を購入することは出来ないが、貸し出しはしている。取り扱う書物は挿絵も無い、子どもには難しい書物ばかりだが、【クリニア皇国の竜】【古代を生きた竜族の歴史】【騎虎と竜】など……竜関連の書物を探し出すことが出来た。 中には異国の言葉で書き記された本もあったため、翻訳辞典は新品を購入した。人を殴れば凶器にもなる厚さだが、厚みは枕としてはちょうど良い。 書物を読み、竜が滅びた仮説がいくつも存在していることを知った。竜族にのみ感染する疫病が蔓延しての感染死。種族間で争われた同族紛争。もしくは竜族の力を恐れた人間による竜狩り…… しかし、本当の理由は未だ明らかになっていないと、サザンクロスでカイジは話していたはずだ。人間が生き残った世界で、そもそも自然を味方にする竜が滅びるはずがないのだと。竜の生命力はそこまで柔ではないのだと──…… そしてマナ自身、出生は不明とされてきた。竜族の中でも生体についての情報が最も少ない風竜。書物の中で想像絵図として描かれたそれは、4本足の有翼種。胴体に比べてやたら翼が大きく描かれているが…… 「……こうじゃないんだなぁ」 元は翼が生えていた場所が、わずかに疼く感覚を覚えた。
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