三章/他国の竜

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*** 「想像通りに染めてくれたなぁ」 「へへっ、私と同じ萌黄色です。最初はカムの赤毛と同じ色で染めようかと思ったんですけど」 「けど?」 「……失敗しました」 「ハハ、まぁ、いいさ。言っただろう、想像通りだったって。萌黄色でもいいかなと思っていたんだよ」 「良かった……勝手にお揃いにしちゃったから、気分悪くされたらどうしようかと思いました」 出来上がった萌黄色のおくるみを持って騎虎の厩舎を訪ねたマナは、受け取ったナツメの顔を見てホッと胸を撫で下ろした。 ナツメ、ハズマの脇にはそれぞれの騎虎、カムとベガが控えている。 夏毛の今は針のような硬い毛で覆われているが、冬になれば空気を通さないように密集した冬毛に替わる。 ヒクヒクと鼻を動かす仕草は、自分にとって無害な相手だと認識している証拠だ。それでも自分より格下の者が体に触れることは許さず、尻尾を振って媚びることもしない。上下関係をはっきりとさせる種族なのだ。 「半年ぶりにここへ来ましたけど……随分と騎虎の数が増えましたね」 「5年前と比べたらここだけでも3倍の数だ。馬で戦いに出る時代は終わり、軍は騎虎隊の増員に力を入れてる」 「今年は騎虎隊に配属された人数も過去最多だった。今になってようやく新人達も相棒となる騎虎を選び始めているよ」
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