三章/他国の竜

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大人の騎虎を手懐けるのは、熟練の騎虎隊員でも難しい。そのため新人は子どもの騎虎を世話するところから始めるのだが、子どもの騎虎は大型犬程度の大きさだ。騎虎が人を乗せて走るようになるまで最低でも2年はかかる。 マナが下女として働き始めた5年前に入隊した若者たちは、今では騎虎の背に乗って出陣するまでに成長していたが、あの年に受かった全員が騎虎隊に残っているわけではない。 相棒の騎虎に噛み殺された者、最後まで背に乗ることを許されず除名を宣告された者など様々だ。 主人を持てば従順で気高い生き物だが、主人を持たない騎虎の場合……または、主人を必要としない騎虎は、獰猛で扱いが難しい生き物であることは間違いない。 その点、竜は人と言葉が通じる分、扱いやすい──……かなと一瞬考えたが、サザンクロスで過ごしていた頃はマナ自身が1番人間の言うことを聞いていなかったことを思いだした。 「マナは騎虎が怖くないみたいだな」 「え」 「男でも騎虎と目を合わせることすら恐れる者が多いんだぞ」 ハズマに言われてその理由を考えた時、黒い火竜の姿が蘇った。大切な故郷を燃やし、大切な家族を奪った存在ほど、恐ろしいモノはない。 「……騎虎の目は怖いと言うより、頼もしい、ていう感じがします」 「ほぅ?」 「ハズマ様」
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