三章/他国の竜

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「……マナはなぁ、ハズマの将来の嫁なんだぞ」 「あのなぁ、ナツメ。そういう冗談は「ゲェッ、趣味悪い!」 「しゅ……どういう意味だ、コラ!」 ハズマの拳骨がサーバルの頭上に落とされた拍子に、マナも手を引き抜くことが出来た。勢い余って後方に倒れたマナをナツメが支えることはない。地面に尻餅をつくまでの一部始終を見て、ヒャッヒャッと楽しげな笑い声を上げるばかりだ。 「ったく……急ぎの用なんだろ。ほら、怪我人が増えないうちに止めに行くぞ」 「マナ、染色ありがとな」 「今度、息子さんを紹介してくださいね」 問題の厩舎に急ぐ3人の背中を見送ったが、初対面のサーバルが何度も何度も振り返る。不可解な執着を見せる茶色い目が、若干、苦手だなと、意識した。 しかし、その日から毎日、サーバルは四季彩署に顔を出すようになった。時には花を持って。時には、菓子を持って。 彼が何を目的として会いに来るのか……恋を知らないマナですら、察するようになっていた。
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