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見習いとはいえ、このまま昇進していけば将来は有望な騎虎隊員。はじめこそ四季彩署の面々も気を遣ってサーバルに接していたが、あまりにも毎日通い詰めるため、次第に相手をマナ1人に任せるようになった。
マナ自身も最近では作業の手を動かしながら話半分に聞いている。彼の生まれから、仕官するまでの話。敬愛している騎虎隊の武勇伝に、それを目指すためにいかに自分が努力しているか……将来はハズマやナツメを凌ぐ立派な騎虎隊になることを宣言し、そうなった暁には君を──……そこまで言って、言い淀む。
『……嫁にでも迎えるつもりですか』
続く言葉を想像したが、それが実現することを避けるために、マナも周囲の人間も深掘りして聞くことはない。
「また来る!」
別れ際には、必ずマナの両手を握りしめる。これもいつもの習慣だ。そして何度も振り返り、その姿が見えなくなるまでマナ自身も見送らなければならない。
「……もう来なくてもいいですよ~……」
「……まぁ、騎虎隊が暇なのは国が平和な証拠だから」
「……平和でも私の仕事は無くなりませんよ」
無駄にした時間を取り戻すように、急いでツルの裁断を再開した。中が空洞になっているポポリのツルは、ナタを振り下ろすたび、中の空気が弾けて『ポンッ』と破裂音をあげた。
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