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「ギャオ!」
「え。あれ、カシュー。どうしたの、こんなところで」
地上にいたのはクラウンの騎虎だ。木に登ろうと幹に爪を立てているが、マナが選んだ大木は騎虎が登るには少し複雑な枝振りをしている。
読みかけの本を枝に引っかけ、カシューのもとまでスルスルと下りてみれば、
「……猿か、お前は」
「わっ!?」
大木の影から現れたクラウンに驚き、地上から1メートルのところで手を滑らし頭から落ちた。グキッともポキッとも違う骨の音が鳴り、頭と首が激痛だ。
「ぐあああああぁぁぁぁっ……」
「……ぐあぁって……一応、女だろ。言葉遣いには気を付けろ」
「……声をかけるなら地上に下りてからにしてくださいよ! ……っ……大体、なんでこんなところに……」
「知らないのか? この国の全土は俺のものだ。どこにいようが誰の許可もいらないんだよ」
「……王子教育はお済みですか?」
「2年前に終わらせた。そういえば、『生意気な下女の頬はつねってもいい』と書いてあったことを今、思い出した」
「……ぜっふぁいにうふぉでふほね」
「書いてなければ項目に俺が加えるまでだ」
つねられた頬はジンジンと痺れる。それを緩和させるために頬をもみほぐすマナに、クラウンは手を差し出した。
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