三章/他国の竜

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「……何の手ですか?」 「お前が見ていた景色を俺も見たい。上まで引き上げろ」 「……1人で登れないなら諦めればいいのに」 ──バシッ もしも、風竜として自伝を残すことがあったなら、ノア王国のクラウン王子に虐げられたことを書き残そう……危なげに枝へ足をかけるクラウンの補助を手伝いながら、マナはそう心に決めた。 つねられ、叩かれ、命令され……本を引っかけた位置まで戻るだけでも一苦労だ。それでも感謝の言葉1つかけられず、代わりに「サル顔負けの身のこなしだな」と……全く喜べない言葉をかけられた。 大木は人2人が乗ってもびくともしない。幹の根元ではカシューが腰を落として主人の帰りを大人しく待っている。クラウンの額にも汗が浮かんでいたが、これからの時間帯は夕涼みの風が吹く。風になびく白金の髪を見て、夕焼けに照らされたらさぞかし綺麗な赤に染まるだろうなと、そんなことを考えていた。 「こんな場所で読書とは、随分と贅沢な時間を過ごしているじゃないか。【自由の象徴、風竜】……なるほど、風竜の気持ちになってここで自由の風を感じていたわけか」 「……それはもう……なんで私は飛べないのかなーとか……これ以上、空に近付くことは出来ないのかなーとか」 「それに関しては同感だ。地上は息苦しく、たまには空へ逃げたくなる」
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