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クラウンは今、竜族を討ち滅ぼすと口にした。故郷を焼いた黒竜なら、自分に代わり倒して欲しいと思うが、しかし……
「……戦争に、なるんですか。竜と騎虎を戦わせるんですか……」
「騎虎が唯一、竜に対抗できる存在なんだ。そのために国内では近年、騎虎の数を増やしてきた」
「でも……」
「お前も竜に関する書物を読んできたのなら分かるはずだ。竜がどれだけ恐ろしい力を持つ存在なのかを……」
「恐ろしいだけじゃない、人間と共存していた時代の書物も残されているじゃないですか!」
「だが現実ではそうじゃない! 今では人間によって管理され、戦争の道具に利用され、多くの命を奪っている! 簡単に町1つ……国1つ滅ぼす恐ろしさをお前は知らない!!」
「分かってるよ、そんなこと!!」
「ッ!?」
「でもそれは、利用する人間が悪いんであって竜は何も悪くないじゃない! 本来は仲間思いの……っ……気高い生き物だよ! 戦争の道具なんて冷たい言い方、2度と口にしないで!!」
「おい、マナ!!」
限界だった。
昂ぶる感情を抑えつけるのは、これ以上は無理だった。
木の上から飛び降りたマナは着地こそわずかに失敗したものの、痛みを堪えて駆けだした。誰の目にもつかない、クラウンが追ってくることの出来ない、声を出して泣いても、誰にも聞かれる心配が無い標高まで歯を食いしばりながら駆けた。
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