三章/他国の竜

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あの日、何故、サザンクロスが襲われたのか、今になって理解した。 何故、あの時、カイジが自分を痛めつけたのか。何故、竜の力を奪ったのか。すべては雌である自分を守るためだった──……だから、シヴァナのように連れ去られずに、風に流されこの国にいる。 憎まれていたわけじゃない。 嫌われたわけじゃない。 カイジは苦渋の最善策をとって守ってくれたのだ。 「……ア……っ……アルト……」 では、アルトは今、どこにいるのか。 黒い火竜と対峙するレイ、シヴァナのもとへ、兄は駆けだしていってしまった。自ら業火の中へ、飛び込んでいった。向けられた背中が、最後の記憶だ。 「……アルト……、……アルト、アルトォッ……アルトー!!」 おねがいだから、そばにいて。 マナをおいて、どこにもいかないで。 そう思ったのに──…… そばで守ってくれるって約束してくれたのに…… 「……バカ……バカバカ、アルトのバカ!! なんでいないの、なんで、どこにいるの!? 無事なら……っ……姿を現してよ……ほんとバカだよ……」
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