三章/他国の竜

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激しい頭痛を覚えた。以前、角があった場所……今も傷跡が残る側頭部がズキズキと痛んだ。 ノーザンクロスに連れて行かれたシヴァナのこと。 シヴァナを守れず、命を落としたレイの無念。 老体のアラサンドラは、無理を強いられていないだろうか。 もしも、雌の竜がこの国にいることが知られたら、ノーザンクロスは……あの黒竜が、再び故郷を焼き尽くしに来るに違いない。 雌を奪うためなら、容赦なく他を犠牲に出来る……その残忍性はこの国の誰よりも知っている。 竜がこの国にいることを知られてはいけない──…… 人間として、生きていかなければいけない…… 風竜の力を取り戻しては、いけない…… 絶望だった。 風竜は何にも囚われない自由の象徴──……周知の言い伝えとかけ離れた自分の現状に、息苦しさと焦燥感を拭えない。 「マナ」 「……ッ……」 「悪かった。お前なら俺の気持ちが分かってくれると思っただけで、竜を否定したつもりはないんだ。ただ昔みたいに純粋に、竜が好きとは言えなくなった」
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