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息を切らして追ってきたクラウンは、マナの隣にどかりと座り込んだ。その頬、更に腕は袖が裂け、大きな擦り傷を作り血が滲んでいる。
木から下りる際に苦労したことは明らかだが、置き去りにしたことを咎める言葉は無い。
「戦争なんて起きないことが1番良いんだ。戦争をしていいことなんて何一つ無い。必ず犠牲は出るし、生き残った者も心に傷を残して生きていかなければならない」
「……ッ……」
「だからと言って、容易く国土は渡せない。それまでの生活を侵略する者に奪われるわけにはいかないんだ。敵国が竜を使って襲撃するなら、我が国は騎虎で応戦するしか抗う術はない。今の俺にとって竜とは、我が国の国民を危険にさらす脅威なんだ、分かってくれ」
「……っ……竜を嫌いになったわけじゃないの?」
「まさか。どうしてノアには竜がいないのかって、何度考えたか分からない。もし、この国に竜がいたら、人と竜族が共存の道を模索したはずだ。クリニアのような扱いは絶対に許せるものではない」
「……~~~っ……」
いる、この国にも、竜はいる。
人間との共存を望む竜が、ここにいる──……
マナはクラウンの代わりにカシューにしがみついた。毛は硬いし、獣臭い。言葉は通じないし、決して可愛いビジュアルとは言えないが、しかし……騎虎を怖いと思ったことはない。
竜と騎虎、互いに敵対する関係でないことは、本人同士が1番よく分かっている。
「……クラウン」
「……うん?」
「……どうかあなたに……竜の加護がありますように」
「……」
この人間を死なせてはいけない……
竜族によって、この国を奪われてはいけない……
マナは、ノアの竜として国の行く末を見守ることに決めた──……
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