四章/縁結び

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萌黄色のおくるみに包まれた赤ん坊が、カゴの中でおひなまきにされている。 やわらかな赤毛と、目覚めた時に見せる大きな目は母親譲りで、性別が女の子だと知った者は口々に「父親に似なくて良かったね」と笑った。 騎虎隊は独身のうちは全寮制の暮らしだが、所帯を持つと王城近くの居住区に家族と共に移り住む。騎虎隊員の階級によって国が用意する家も異なり、平では簡素な作りの長屋暮らし。部隊を1つ任されれば、階級相当の一軒家が与えられた。 赤ん坊が産まれたのは、庭園付き2階建ての屋敷だ。庭には夫人が好む華やかな花が満開の時期を迎え、連日、女児の誕生を祝う客人が祝いの品を持って訪ねていた。 「名前はもう決めたんですか?」 「えぇ、夫がシェリルと。顔に似合わず、可愛い名前を考えてくれたわ」 「ふふっ、ハズマ様も早くお子さんに会いたいでしょうね。ケリーさんも待ち遠しいんじゃないですか?」 「親ばかっぷりを想像しただけでも暑苦しいわ」 「シェリルちゃんとの初対面の現場には是非、居合わせたいですけどね。ハズマ様がどんな顔をするのか」 「そこは家族水入らずの時間でしょう、遠慮してくれる?」 「は~い」
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