プロローグ

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その後、ノーザンクロスで見つかった火竜も証言している。過去に風竜は存在した。骨が見つからないのは、死とともに塵になって風に運ばれるからだ、と。 研究施設で資料を広げるカイジの視界を遮るように、ディスクの上では風竜のマナがコロコロと転がっている。どかそうにも捕まらない。触れようとすれば、すぐ逃れる。「こ、こ、こ、こ」と鳴く声は、仔竜が遊んでいる時に発する声だ。 「しかし、竜骨も見つからなかった風竜の卵をよく見つけましたね」 「見つけた、と言えるのか定かではない。何せマナはサザンクロス保護区域で見つかったんだ」 「ここで?」 「正確には生まれたばかりの仔竜の姿で発見された。森の中で枝に引っかかっていたんだ。我々から見ればただの毛玉だが、同族の3人がそれを竜族と判断。中でもアラサンドラがマナを風竜と断言した」 「こ、こ、こ、こ」 「け、け、け、け」 「……」 マナとアルトが共鳴していると思ったら、マナはアルトの腕の中にしっかりと収まっている。風竜は何者にも捕らえられない──……という迷信は、どうやら相手を選ぶらしい。 「しかし、卵の化石を蘇らせたんじゃないんだとしたらマナは親の元から生まれたことになります。まさか風竜は滅ぶことなく、現代も存在している可能性が……」 「もちろん、それも含めた調査する必要がある。しかし、風竜の存在を明らかにすることは、マナ1人でも危険なんだ。国にも“風竜の雄が卵から孵化した”と報告している」 「……雄?」 「風竜、性別、出生……希少価値だからこそ危険要因だ。北に知られればどうなるか。想像するのも恐ろしい」 竜族との共存を目指すサザンクロスとは対極に位置するノーザンクロス竜監視区。11年前に南北で竜を振り分けられた際、北には8体の竜が収容された。
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