四章/縁結び

5/20
前へ
/503ページ
次へ
ノア王国に来て12年目の夏。マナは16才になった。 今でも四季彩署の下女として、職人達の作業補助にあたっている。キヌヅカの下にオイリが副署長として就き、マナの下にも9才になる下男が就いた。山に入る時は同行させ、なるべく原料に触れさせる作業を積極的に振るようにしている。口数は少ないが、真面目で仕事の覚えも早い子だ。 「お前も随分、下っ端の時期が長かったから、サラエムが入って嬉しいだろ、マナ」 「はい、弟のように可愛がっていますよ。褒めるときだって先生のように頭をわし掴むのではなく、優しく撫でてあげています」 そう言うと紅葉を散らしたように顔を紅潮させる少年を見て、四季彩署の面々は声をあげて笑った。 小さな女児がカゴを引きずりながらキヌヅカの後を追っていた過去も、今は笑い話だ。今ではマナもキヌヅカの身長も越し、瑞々しく美しい娘盛りを迎えていた。
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加