12人が本棚に入れています
本棚に追加
町へ出れば人目を惹くこともあるが、日常生活を送る上では注目される機会は少ない。1日の大半は工房か山で過ごし、ハズマとナツメを訪ねない限り、騎虎隊に近付くこともなかった。
「マナ、今すぐ俺のもとへ嫁に来てくれ!」
「……」
「……あの……聞いてる?」
「……それはもう何百回も。そのたびに同じ言葉でお断りしてきたはずです、『申し訳ございません』って……私に何回頭を下げさせる気ですか」
「もちろん、頷いてくれるまで」
ポポリのツルを切断しながら、正面に座る騎虎隊員に一瞥を向けた。
見習い期間を終え、正規に騎虎隊員になってからも、サーバルは時間を見つけては四季彩署に顔を出している。
少年は精悍な若者に成長し、告白の際に言い淀むことも今はない。出会ってから7年間、彼の茶色の瞳にはマナが映り続け、次第に四季彩署の人間ですら「いい加減、気持ちに応えてあげたらどうだ」と援護射撃をするようになった。
「サーバル様なら将来は有望だ。早く決めてしまわないと、他の女にとられてしまうよ」
「16才なんて嫁入りが早すぎる年齢でもない。工房のことは心配しなくても良いから、マナは自分の将来を優先しなさい」
「もっと! もっと言ってやってくれ! ほら、マナ。俺と結婚すればここにいる全員が祝福してくれる。幸せなことだと思わないか!?」
「……ちっっっっっとも。人の幸せを勝手に決めないでください」
最初のコメントを投稿しよう!