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紺青の瞳に睨まれても、サーバルはそれを「美しい」と思う。怒らせてもこれだけ気持ちが昂ぶるのだから、優しく微笑みかけられたら、どれだけ幸福感に包まれるのだろう──……
恋敵が少ない今のうちに、と思うのだが、口をへの字に曲げた少女は見かけによらず頑固で、今はまだ恋愛よりも仕事に生きている。
「安心しろ、他の女は眼中にはない。今までもこれからも、一途に君を想い続ける」
「いや、ですから「困らせる顔も好きだから、また明日も会いに来るよ」
「……」
指先が青く染まったマナの両手を包み込んで、サーバルは四季彩署を後にした。
「……サーバルさん、いい人なのに何がダメなんですか?」
「……子どものサラエムに言っても分からないと思うんだけど」
「……」
「……愛されすぎて怖い。あの気持ちを受け止めてしまったら、めちゃくちゃにされそう」
「……全然分からないです」
背後でお茶を吹き出す職人がいたが、ちろりと舌を出して、構わず作業を再開した。
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