12人が本棚に入れています
本棚に追加
ポポリの葉で染めるには、半日水に浸しておく必要がある。強火で煮立てると粗い繊維がほつれてくるため、それを確認したら火を弱め、更に3時間ほど煮込めば真朱色の染液が出来上がる。
白布を染色された後は縫製を請け負う裁縫部に渡され、1着のドレスに仕上げられる。王女様の7才を祝う宴の席で、女官長の名前で贈られる献上品だ。赤と白の糸で細かい刺繍を施し、健やかな成長と王家の繁栄の願いが込められる。
後日、女官・下女には王女の名前で甘味が振る舞われ、王家へより一層の忠義と従事を誓う──……
下女には関係の無い話だが、王族の誕生日などの祝いの日には、女官も装飾品の着用が許された。おめでたい席に彩りを添える意味があるが、その日のためにわざわざ新しい官服を仕立てる者も少なくはない。そのため四季彩署も、ここ数日は忙しい日々を過ごしていた。
(上手くいけばカフ国王陛下やクラウン様のお目にとまる機会でもありますからね。女は1番美しい姿を見てもらおうと、そりゃぁ、必死に着飾りますよ)
(間違っても、シミのついた服で陛下の前に出るわけにはいきません……マナ、頭に虫が付いてます)
「え、あ、ほんとだ。見て、テント虫!」
(((見せなくていい)))
最初のコメントを投稿しよう!