四章/縁結び

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騒動が起きたのは、それから2週間後。セシル王女7回目の誕生日を祝う席で、国王の怒号が城内に響き渡った。 その日は朝から城下も賑わいを見せ、王女に贈る祝いの品を積んだ馬車が列を為していた。昼間から花火を打ち上げ、大道芸人が陽気な音楽を鳴らして市民を盛り上げる。民はノア国の国旗を軒下に掲げ、広場では軍の吹奏楽団が祝賀の楽曲を披露した。 マナもサラエムを連れて町へ下り、花売りから王女の誕生を機に命名されたセシル・ローズの花を一輪受け取った。婚礼前の女性が受け取るものだと知ったのは、花を見た未婚の男達に取り囲まれたためだ。 サラエムの手を引きながらどうにか四季彩署に逃げ帰ったが、非日常の空気は十分に楽しめた。 「人を大勢いてとても賑やかでした!」 「マナさんに綿菓子を買っていただきました」 「良かった、楽しめたみたいだね」 昼間は市民に祝われ、夜は城内で祝いの宴。大広間で開かれる晩餐会には、王族のみならず国の要人も出席し、王女の未来と国の行く末を話し合う社交の場──……であるはずだった。
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