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《 三 》
よそ行きの彼は、アルコールの染みた身体と整った造形を持つ女を連れて部屋へ帰った。
我慢出来ないと訴えるように彼へ身体を押し付けて来る女を寝室へ誘い、もつれるようにベッドへ雪崩れた。
互いの身体に手を這わせ、舌を這わせて濃厚な口付けを交わし合う。早くしてよと言わんばかりの女の乱れた衣類をはだけさせ、胸を揉みながら吸付けば女は嬌声を漏らした。そこがそんなに良いのかと激しく刺激すれば、荒い息遣いと官能に酔いしれた声が彼の耳へ届いたが、頭の中で響いた声は甘い隣人の声だった。
彼女があの声で先生と呼ぶのが彼は好きだ。エレベーターの中で相手の体温が高く感じたのは彼も同じだ。初めて触れたのだ。相手の温かさがどれくらいかも知らずに触れた感触は、冷たさよりも温かさが勝った。
脳裏を過ぎったら最後、消えてくれない隣人の存在を掻き消すように、求められるがまま女の五感を刺激した。
女はとにかく欲張りだった。感じさせれば感じさせるほど、「もっとして」と止まない。湿りきってなど当に過ぎて、とろりと開ききったそこへ早く充てがってほしいと女は遂にねだり出す。切なく彼を求めるその声が彼の美への欲求に刺激を与える。
仕切り直すように彼は女の全身に舌を這わせて味わい出し、女はねっとりとした刺激に身体をくねらせたり、反らせたりと忙しい。何度女が達したかもうわからなくなった頃、彼は彼女を手放して、身体を起こし、座り込んだ。
ことりと背後の壁の向こうで物音がした気がする。時々隣から物音が聞こえることは知っていた。
眼下の女の身体は美しい。だから彼は彼女を抱いているのだ。
女も身体を起こし、起き上がり彼の首元へ腕を回した。熱い女の口付けに頭がぼうっとする最中、彼は準備を済ませた。
「来て、跨いで」
彼は女の耳元で、しかし大き目の声で女を招いた。
待ちかねた女は彼に跨り、自ら腰を振り出す。ぐっと締まって行くにそこの刺激に彼は声を上げた。
女は隣人を気にすることなく本能のままに嬌声を漏らす。
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