《 四 》

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《 四 》

 この世界では、付属品を棄てた女の姿は美しいらしい。自分も棄て行けば、美しくなれるだろうか。  彼女は棄てられないものばかりを身に纏っていた。彼女は自分が纏うものを棄てる方法を知らない。  彼女は最近、寝る前の日課を行わない。その結果、違う日課が出来上がりそうになっている。  寝巻きに着替える前、姿見の前に佇み、じっと自身の裸体を見つめる。なにも考えずに、ただなぞるように眺め、これが自分の身体だと確かめるように全身を指で撫でていく。  きっと自分の裸体は美しくない。美しい隣人との距離をこれ以上縮めたら、美しくない自分に彼はがっかりするかもしれない。そう思うと哀しくなる。哀しくなるから、自分を慰める。  彼女は身体にいくつも傷がある。その傷に触れただけではなにも感じないのに、前々から度々聴こえていた彼の艶めいた声を思い出しながら触れると、ぞくりと快感なのかわからない感覚が襲う。何度も傷跡に手を這わせていると、身体がだんだんと熱っていく。息を吐いた自分に気付き、自身が感じていることを悟った。
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