唐突にヒロインが登場するくだり

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「あんたすごいな。催眠術師か?」 赤ん坊言葉使って教室の床で仰向けでじたばたしてるくそ教師を無視しながら、俺は18番の女に精一杯誠意を持って話しかける。 ああ、なんて礼儀正しいんだ、俺は。俺の礼儀正しさは日本社会の正解を清く正しくなぞっている。 だが、俺は簡単には礼は言わない。女に自分が助けてやったと思わせない為だ、こんなわざとらしい喋り方の女に恩を売るとろくなことにはならないからな。 「まあそんなようなものかもしれない。ただの高校生だけどな。君は出席番号6番の男だな。君こそ、よくこの暴力教師の攻撃にずっと耐えていてすごいじゃないか。その根性こそ誇っていいものだよ」 そう言って18番の女は微笑んだ。その微笑みが、春風と共に古い大木を切り裂いた稲妻のような衝撃を俺の心にもたらしたことも、認めたくない事実だ。
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