新しい駅。

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…暗闇の学校。 さっきからずっと息を切らせて走り続けている。 壁から、天井から次々ゾンビが走って追いかけてくる。 ゾンビウイルスに冒された学園の生き残りをかけた物語だ。 停電したこの学園から、逃げ出さないと行けない。 青春路線というより、これはホラー路線に分類されるんじゃないのか。 後悔しながら、必死で走った。 とにかくゾンビのリアリティがすごい。 生徒の死体はゴロゴロと転がっている。 あまりの恐怖で、台本どころではない。 さっきからずっと走っていて、足が限界に近づいている。 曲がり角で、ドンと何かにぶつかった。 ゾンビか。 「ちょっと、私よ!」 目の前にいたのは、莉奈だった。 まさか、同じ映画に乗車していたのか。 「よし、一緒に逃げよう」 莉奈の手を握り、夢中で走った。 次々追ってくるゾンビに噛まれようものなら、ゾンビになってしまう。 彼女を何としても守らなければ。 もうすぐ学校から出られる、というところで、挟み撃ちにあった。 「ここは、俺が時間を稼ぐから、逃げて」 「いや、でも…」 「行くんだ」 「ダメ、ここは私が」 「いいから早く。絶対ゾンビから逃げ切って」 俺は、ずっと握ってきた彼女の手を離した。 莉奈のためならと思うと、勇気が出た。 一心不乱にゾンビに襲いかかった。 走り去る彼女の後ろ姿を笑顔で見送る。 そして、少しずつ、意識が遠のいていった。
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